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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 9/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

 彼女の家は、この界隈では平均的な大きさの二階建て一軒家だったが、狭い庭にたくさんの花が植えられ、それでも足りずにコンクリートの門塀周囲にも、数多くのプランターが並べられていた。お母さんの趣味なのだが、やや度を越している感もあって、近所の子供たちからは“花やしき”と呼ばれているらしい。「お兄さんの言うことはわかるけど、それはあくまでも一般論でしょ。誓って言うけど、私は結婚式を一世一代の晴れ舞台だなんて思ってないから」「でも、本当はやりたいんじゃないの? ゴンドラで入場とか、お色直し三回とか」「ずっと一緒にいるのに、私がそういうのに魅力を感じない女だって、わかんないかな」 確かに普通に考えれば、そうだけれど──結婚式に限って言えば、単純に決めてしまうわけにはいかない気がする。普通なら、一生に一回しかやらないものなのだから。「トモくんの気持ちもわかるけど、そういうのやめようよ。少なくとも私たちは、お互いの腹を探り合うような夫婦にはならないようにしよう。嫌なら嫌、いいならいいで、言葉どおりに受け取るようにして、本当はこうなんじゃないのか、あぁなんじゃないのか……なんて、考えないようにしよう。そんなことしていたら、誰の言葉を信じていいか、わからなくなるよ」 家の手前で立ち止まり、美智子は強い口調で言った。「それに、お兄さんは間違ってる。私、トモくんに幸せにしてもらおうなんて、思ってないよ。そもそも幸せって、その時その瞬間に感じるものでしょ。トランプとか麻雀みたいに、