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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 10/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

10あぁ、おじいちゃん、いいこと言うなぁ。「おまけに夢は、大きければ大きいほどいい。人間は、自分が望んだもの以上に大きくなるなんてことは難しいから、若いうちから小さくまとまっているようなヤツはダメなんだと……まぁ、確かに、そういう面もあるかもしれないけどね」そう語る時のお義父さんは、あまり楽しそうではなかった。「そんな調子だから、俺が普通の会社員になった時は、あまり喜ばなかったんだよ。会社員は会社員で、それなりに夢もロマンもあるってことが、親父にはピンと来ないんだ。何も御大層なことをするばかりが、夢ってもんじゃないはずなのに」お義父さんの言うこともトモローには理解できたが──どちらかというと、自分はパリのホームレス的発想の方が好きだった。「そのくせ、ちゃんと家族に飯を食わせる甲斐性も必要だとか言うんだから、矛盾してるよ。昔の男っていうのは、ずいぶん適当だよな」その〝昔の男”の中に自分は入っていないようだが、確かにお義父さんは、誰よりも柔軟な考え方をしているような気がする。「じゃあ、俺が主夫やってるって知ったら、怒られたりするでしょうか?」「怒りはしないけど、説教はされると思うよ。それこそ小一時間くらいは」お父さんがそう言って笑った時、後ろのシートにいた美智子が、どこか切羽詰まった声で言った。