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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 11/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

11「あぁ、ダメ……お父さん、どっかで車を止めてくれない? 吐いちゃいそう」「ミッちゃん、そんなにひどいの?」「何か頭もガンガンしてきた。もしかしたら風邪ひいたのかな」 年末にはかなり冷え込んだので、その可能性もないでもないな……とトモローは思った。寝相の悪い美智子は、よく掛布団を蹴け脱ぬいでしまうので、朝起きた時には体が冷え切っていることが多い。風邪をひいたって、何もおかしくないだろう。ちょうど町中の幹線道路を走っていたので、お義父さんは適当な角で曲がって車を止めた。まるで狙ったように小さな公園があり、美智子は車を降りてトイレに駆け込んだ。不安げな顔で、お義母さんが後に続く。「確か角を曲がる前に、けっこう大きい薬屋がありましたよね。俺、そこで胃薬買ってきますよ」トモローも車を降りて薬屋に向かい、胃薬と風邪薬を買ってきた。家には買い置きなんかないので、一緒に買っておくのが賢明というものだ。車に戻ってしばらく待つと、やがてお母さんに抱きかかえられるようにして、ゲッソリとした表情の美智子が帰ってきた。もしかすると、何かに当たったのかもしれない。「ミッちゃん、胃薬と風邪薬、買っといたよ」ペットボトルのお茶と一緒に差し出すと、それを断ったのは、お義母さんの方だった。「今、ミッちゃんに詳しく症状を聞いたんだけど……とりあえず薬は飲まない方がいいわ」