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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 13/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

13「トモローくん」やがてお義父さんが、小さな声で言った。「夢があるかないかに関係なく、どんどん回っていくものだよ……運命ってのは」「はぁ……」我ながら、ものすごく間抜けな返事をした。正月休みが終わるのを待って美智子は産婦人科に行き、正式に妊娠が告げられた。医者に行く前に市販の検査キットも使ってみたので、心の準備は十分にできていたはずだか──やはり実感が湧かなかった。「というわけで、やっぱり妊娠してました。順調なら、夏に出てくるそうでーす」コタツに足を入れながら報告する美智子は、言葉尻にハートマークをつけたくなるような明るい口調だった。「へぇ、そうなんだ」「何よ、その気の抜けた言い方……うれしくないの?」「いやいや、うれしくないなんてことは絶対にないけど、何が起こってるのか、よくわかんなくて」それは包み隠さない本音だった。女性は妊娠することによって体調が変化し、嫌でも事態の大きさを実感できるのだろうが、