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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 15/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

15「そうだよ。今だって、ちゃんとした家族だよ。でも、血は?がってないでしょ」「血が?がってたら、やばいって」「そういう意味じゃなくて……寂しい言い方をしちゃうと、私とトモくんは、結局は他人じゃない。別々のところで生まれ育った人間が結婚して、同じところに住んでるだけでしょ」確かに寂しい言い方だが、言っていることは間違っていない。「でも子供が生まれたら、その子のお父さんとお母さんになるんだよ。これって、すごいことじゃない? 子供の頃は、まったく知らない同士だった私とトモくんが、家族になるんだよ。しかも、その子の中で、私とトモくんの血が混ざり合ってるんだよ」そうだ──考えてみれば、すごいことだ。「まぁ、今は実感が湧かないのも、しょうがないかもね。こんなに気持ち悪くなければ、私だってトモくんみたいに、ぽかーんとしてたかも」つわりが始まって以来、美智子はろくに食べていなかった。というより、体が受け付けなくなってしまったのだ。何もお正月に……と思わないでもないが、こちらの都合を無視して、運命は回るものだ。「でも、今のうちに言っておくけど、私、仕事を辞める気はないからね」やがて美智子は強い口調で言った。「幸い、うちの会社はそういう制度だけはしっかりしてるから、それをフル活用して産む。