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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 2/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

が徐々に増えていくのも当然の流れだ。もちろん、それも小説修行の一部と言えば、言えなくもない。いったい何が作品に役立つかわからないので、どんな知識でもあった方がいいのは当然だが──問題は、それがいつ役に立つのか、トモロー自身にもわからないことだ。今書いているものに直結する知識もあれば、そのまま意識の下に沈み込んで、数年後にようやく使えるようになるものもある。あるいはインプットしたそばから流れ出てしまって、永遠に戻って来そうにないものあるから、正直なところ、役に立つ知識かどうか、その時に判断するのは難しい。だからトモローのやっていることを、一概にムダと言い切ることもできないし、有意義に時間を使えているとも言い切れなかった。まぁ、どちらにせよ、他人から見れば、遊んでいるとしか思われなかったであろうが。とはいうものの、さすがに自分の立場というものはわかっているので、トモローも好きなことばかりに時間を割いているわけではなかった。掃除・洗濯・炊事の家事三本柱は絶対に手を抜かなかったし、以前よりも上達した面も少なからずある。特に料理に関しては、かなり進歩したと自分でも感じるほどだ。トモローが料理をするようになったのは、小学校三年生からである。母に逃げられて孤軍奮闘していた父の負担を、少しでも減らしてやりたい……という殊勝な気持ちもないではなかったが、どちらかというと必要に迫られて覚えたという方が正しい。早い話、自分で作らなければ食事にありつけなくなるような事態が、その頃には頻繁にあったということだ。