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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 12/20

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

12いの。仕事でも一流になりたいし、お母さんにもなりたい。もちろん奥さんとして、トモくんの夢も応援したいのよ」人生のおいしいところを総取りしたい……という言い方が、とても美智子らしかった。「だから、少しくらい大変なのは、しょうがないと思うのよ。大丈夫、今だけガマンすれば、きっと切り抜けられるから」「でも……何かあったら、大変じゃないか」トモローが心配して言うと、やはり必ず、こんな言葉が返ってきた。「ヤバいと思ったら、すぐにお医者さんに行くから心配しないで。それより、ここで頑張れば、かわいい子供がいるうえに、私は一流のインテリアデザイナー、トモくんは作家先生だよ。こりゃもう、イッヒッヒじゃない?」何もかもがうまく行った後、二人で顔を見合わせて笑うイメージだ。「そりゃ、まぁ……イッヒッヒだね」「そうだよ。ここはがんばって、イッヒッヒを目指そうよ」それから“イッヒッヒ”は二人の合言葉のようになり、へこたれそうになると、二人で顔を見合わせて、イッヒッヒ……と笑った。そんな能天気な過ごし方がよかったのか、美智子の経過は極めて良好──お腹の中で子供は順調に大きくなり、特に心配するようなことは、まったく起こらずに済んだ。一時期、逆子になっていたことがあるが、医者から教えられた体操を繰り返すことで、自然と正位置に