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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 15/20

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

15と疑えるようなタイミングだった。「ホントに? 一回、トイレに行ってみた方がいいんじゃない?」「いやいや、トモくん、さすがにそれはない。いくら私でも、食あたりとお産の区別はつくから」額に汗をうっすらと浮かべながら、美智子は泣き笑いのような微妙な表情を浮かべた。「タクシー呼ぼうか」「ちょっと待って……ふうっ、治まった」しばらくして、美智子はけろりとした顔で言った。陣痛は、ある一定の周期でやって来て、さっと引いてしまうものだ。「今のうちに、お医者さんに電話しよう」美智子は腰をトントン叩きながら、産婦人科に電話を入れた。「陣痛が十分間隔になったら、来いって」かねてから打ち合わせしていたらしく、電話はすぐに終わった。「支度はバッチリしてあるよ」すでに何日も前に整えておいたバッグの中身を、トモローは確認する。もう、今にも子供が生まれてくるような気がしていた。「トモくん、そんなに焦らないでよ。ここからが長いんだから」「えっ、そうなの?」