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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 16/20

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

16「この後、陣痛が激しくなるんだけど、私の知り合いで、ここから二十時間以上かかった人がいるわ」「二十時間……」「もちろん、みんながそうってわけじゃないのよ」そうしているうちに再び陣痛が訪れ、また去っていった。その間隔が十分になったのは、午後になってからだ。「じゃあ、タクシー呼ぶよ」電話の受話器を取り上げたトモローに、美智子はさらりと言った。「いいよ、もったいないから……歩いて行っちゃおう」「えっ、それは、いくら何でも豪傑では」「大丈夫、大丈夫。むしろ歩いた方がいいのよ」陣痛が引いている時は、まったく普段と変わりない美智子なので、その言葉にも説得力がある……ように感じられた。(ホントに大丈夫なのかな)片手に荷物を持ち、もう片方の手を美智子と?いで歩きながら、トモローは思った。もし知っている人と会ったりしたら、美智子は何気ない口調で「これから、ちょっと子供を産んできます」とでも言うのだろうか。「いよいよだね、トモくん」