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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 17/20

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

17散歩するような歩調で歩きながら、美智子は言った。「いっぺんに三人も生まれるんだから……何かと大変になるよ。トモくんも、しばらくは小説が書けないかも」「三人生まれるって……三つ子だったの? 聞いてないよ、それ」「バカね、そんなわけないでしょ」美智子は突然足を止めて、空いている手でトモローの?を撫でながら言った。「パパとしてのトモくん、ママとしての私……そして、この子よ」「あぁ、なるほど」確かに父親になるのは初めてなのだから、お腹の子が生まれた瞬間に、父親としての自分も、この世に生まれてくることになる。 「ラーメン屋さんの冷やし中華みたいに、部屋に貼った方がいいかな……『お父さん、始めました』って」「いいわね、それ」産婦人科に着くと、門の前で記念写真を撮ってから、中に入った。幸いなことに、その後、二十時間もかかることはなかった。家を出る前に連絡しておいたお義母さんが到着して間もなく美智子は破水し、分娩室に入っていった。その病院は身内の立会いをさせない主義(それはそれで、何らかのポリシーがあるのだろう)なので、トモローとお義母さんは外のベンチで待たされた。中の医者の声がよく聞こえ