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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 5/20

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

……次の裕ゆう也やは七夕頃が予定日だったのに、今度は半月早く生まれたしね」そこまでズレると予定日とは言えないのではないかと思うが、同じような話をお義母さんからも聞かされたことがある。何でも最初の子は予定日より遅れるのが当たり前で、二人め以降は逆に早めに生まれることが多いのだそうだ。だから医者から教えられる予定日は、あくまでも目安程度に考えておくのがいいらしい。「それにしても……そうかぁ、おまえも親父かぁ」コップ二杯のビールを喉に流し込んだ後、妙にシミジミとした口調で兄貴は言った。「鼻を垂らしてた頃を知ってるせいか、やっぱり何か不思議な気がするな。おまえが人の親になるなんて」「それは俺だって同じだよ……さんざん人の道を踏み外した兄貴が、今は人の親になってるなんて」「あわわわ、トモローくん、そういうことは言わない約束よ……っていうか、子供らが本気にするだろうが」地元で〝イナヅマ☆ゴロー〟の異名(☆含む)で呼ばれるほどヤンチャだった兄貴だが、確かに人の道を踏み外した……とまでは言えないかもしれない。主観にもよるが、徳とく俵だわらでギリギリ踏ん張ったことにしておいてやってもいい。「で、親になるのは、どんな気分だ?」「それが……あんまりピンと来なくって」