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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 6/20

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

繰り返しになるが──子供ができたと言っても、男の方は体に変化が起こるわけではないので、どうしても実感に乏しい。結局は、つわりに苦しむ美智子を見てオタオタして、背中をさすってあげるくらいのことしかできないものだ。「まぁ、そうだろうな。特におまえは、変にクールなところがあるから」「クール?」ステゴザウルスのように鈍いと言われたことはあるが、クールというのは初めてだ──そう答えると、兄貴は大げさに笑った後、どこか改まった口調で言った。「おまえは昔から、何たってそうだったじゃないか。まるで石炭みたいに火が点きにくいくせして、いっぺん点いたら、ずっと真っ赤っかだ。たぶん余計なことを考えすぎて、全体に火が回るまで時間がかかるんだろうな」何となく褒められているような気もするが、そうでもないのかもしれない。「だから……相当にすごい親バカになると思うぜ。これは賭けてもいいよ」どうしてそういう流れになるのかわからないが、ゴローは自信たっぷりに言う。「今は実感がなくて、どうしていいかわかんないと思うけどな……生まれたら、もう子供しか見えなくなるんじゃないか。おまえは、そういうタイプだよ」「そうかなぁ」「絶対そうだよ……だから子供が生まれたら、小説家になろうなんて妙な夢は吹き飛んで、その子のためにも、ちゃんと働こうって気になるかもな」