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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 7/20

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

その時になっても兄貴は、子供じみた夢を追いかけているトモローの生き方を良しとしていなかった。一流のインテリアデザイナーを目指す美智子も、今の生活形態を望んでいる……といくら説明しても、「それは美智子ちゃんが、おまえに気を使っているんだ」と言い張って、頑として信じようとしないのだ。 だから、その話を兄貴とするのはやめようとトモローは思っていたのだが──子供が生まれると、そんなふうに人は変わるものなのだろうか。「まぁ、人にもよると思うけどな」トモローが尋ねると、兄貴は近くで遊んでいた下の子を抱き寄せ、無理やり自分の腿ももの上に座らせて答えた。「子供ができるってのは、すごいことなんだぜ……何せ、ホントに自分より大事なものができるんだからよ」「何だよ、兄貴だって、かなりの親バカじゃんか」こういう場合は〝子煩悩〟という言葉の方がいいのだろうが、とりあえず兄貴の使った言葉に合わせておく。「自慢じゃないけど……こいつらが生まれる前は、自分より大事なものなんかなかったぜ。冷たく聞こえるかもしれないけどな、親父にしろ弟のおまえにしろ、自分の命に比べれば、二番めか三番めだ」「アタシは何番目なのよ」