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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 10/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

10「結局、お母さんが名前を付けたようなもんじゃない?」後日、美智子が納得いかないように言ったが──世の中、そういうものかもしれない。それからは、怒ど濤とうの日々が続いた。お義母さんの話によると、育児というのは初めの方が大変で、後になればなるほど、負担が減っていくのだという。特に子供が話せるようになり、「お腹空いた」とか「どっかが痛い」と言えるようになれば、むしろ楽なものらしい。(ふーん、そういうもんなんだ)チーコが生まれる前は、そんな言葉もノンキな気持ちで聞いていたトモローだったが──いざ生まれてみると、その言葉が真理であることを認めざるを得なかった。何せ生まれたばかりの赤ちゃんは、泣くか寝てるかのどちらかである。泣き出した時は、たいていお腹が空いたのか、オシメが濡れたかのどちらかだと思えるが、親を始めたばかりの人間には、その区別は難しい。あまり派手に泣かれると、何か病気なのではないかと思えて、気が気ではない。また、動き回らない分、見ている分には楽と言えるかもしれないが、何せお腹が小さいので一度に飲めるお乳の量も少なく、当然のように授乳の間隔も短い。だいたい二時間から三時間に一度というのが標準的らしいが、前に十分飲んでいなかったりすると、その間隔は当然短くなる。