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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 11/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

11むろん赤ちゃんがお乳を欲しがるのに、時間の区別はない。昼夜を問わず、お腹が空いた時にはガンガン泣く。だから夜中にも授乳する必要があるのだが、ここで、ある選択をしなければならない──母乳で育てるか、市販の粉ミルクで育てるか、その両方を組み合わせるか、である。赤ちゃんを産んで一週間以内に出る“初乳”には、豊富な免疫成分などが含まれていて、ぜひとも飲ませるべきものらしいが、それ以降は、市販のミルクで代用してもいいのではないか……というのがトモローの考えだった。というのも、チーコにお乳を飲ませるために美智子が無理に起きているのを見ると、つい自分が、市販のミルクを作ってあげたくなってしまうからだ。何せ美智子は、一度寝ついたら雷が鳴っても起きないタイプである。中学生の頃、家のすぐ近くでガス爆発事故があってガラスが震えるほど大きな音がしたのに、まったく目を覚まさなかったという逸話(部活で疲れていたから……というのが本人の弁である)を持っているほどなのだが、その美智子が、夜中に気力を振り絞って起きるさまを見ると、軽くビビってしまうのだ。「がんばれ私、起きろ、チーコが泣いてる……私はママだ、ぐああああーっ、根性だーっ、起きろーっ!」チーコの泣き声に気付いて、真夜中に起きる時の美智子の言葉を再現すると、こんな感じであるが──髪の毛を振り乱し、授乳しやすいように前が開くようになっているネグリジェ