tomorou007

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 13/16

電子ブックを開く

このページは tomorou007 の電子ブックに掲載されている13ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

13んの方は、生後三、四か月くらい経たないと、はっきりとものが見えないらしいが。「じゃあ、昼の間に冷凍したのを解凍して、俺があげるっていうのは?」「そう言ってくれるのはありがたいけど、それは最終手段にしときましょ。私が起きれば、チーコも産地直送のお乳が飲めるんだからね。私、がんばっちゃうよ」さすが母親ともなると、違うものだな……とトモローは思ったが、感心するのは、まだ少し早かったと痛感したのは、十月末のある真夜中のことだ。チーコが生まれて一か月半ほどが過ぎていたが、どうもチーコは母乳を吸う力が、そんなに強くないタイプらしい。飲んでいるうちに疲れてしまって、お腹がいっぱいになる前に眠ってしまうことが多いのだ。そのために授乳回数は多く、それに付き合い続けてきた美智子は、慢性睡眠不足状態であった。その夜、チーコの泣き声で先に目を覚ましたのは、トモローである。そっとベビーベッドからチーコを抱き上げ、うつ伏せになって眠っている美智子のもとに連れていった。「ミッちゃん、チーコがおっぱいだって……ミッちゃん、ミッちゃんってば」 何度も名前を呼んで揺り起こすと、美智子はゆっくりと体を起こした。どうやらレム睡眠の最深部にでもいたのか、かなり辛そうだった。「大丈夫かい?」「……大丈夫。私、ママだから」美智子は気力を振り絞って布団の上に座ると、チーコを抱いておっぱいをあげ始めた。