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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 14/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

14(いや、これは大丈夫じゃないだろ)いつもなら美智子に勧められるままに寝入ってしまうトモローだが、その時は布団の中から、ずっと見守っていた。しばらくすると──案の定、チーコを抱いている美智子の頭が、ぐるぐるとまわり始めた。「ミッちゃん」声を掛けると、ハッとして顔を上げる。「ダイジョブ、ダイジョブ、ちゃんと起きてる」疲労と睡眠不足が続いている今、正直、その言葉に心もとない感じがした。チーコは膝の上に載せているから、まさか落としてしまうようなことはないだろうが──。心配していると、突然、小さな鼾いびきが聞こえてきた。そっと近づくと、美智子は座った姿勢で授乳したまま、寝落ちしていた。(かわいそうだけど……仕方ない)トモローは美智子の肩に手を置いて、揺り起こそうとしたが──ふと閃ひらめいて、そのまま背後に回った。考えてみれば、この場合、用があるのはおっぱいのみである。チーコの体を支えることができれば、美智子が起きている必要はないのだ。トモローは美智子の腕の下に自分の腕を差し入れ、チーコの体を美智子ごと抱き支えた。また、ボンヤリしているらしいとはいえ、チーコが目を開けた時に、誰も自分を見ていない