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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 15/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

15と感じさせるわけにはいかないので(赤ちゃんが、そういうことを考えるかどうかは知らないが)、美智子の頭の横から、チーコを覗き込んだ。(おー、まるで俺が、おっぱいあげている気分)思いつきでやってみたが、これもなかなかいいものだ……と思う。これなら美智子を寝かしておいてやれるし、チーコのお腹も膨れる。(ん? 左は空っぽになったかな)チーコの口の動かし方が、どこか焦れったく感じているように思えて、そっと左の乳首から口を離し、抱き替えて右の乳首に吸い付かせてやる。そんな大胆なことをされれば、さすがの美智子も目を覚ます。一瞬、何が起こっているのか理解できないようだったが、わざと小さな声でトモローは言った。「ワシは、おまえの背後霊じゃ。安心して、眠っているがよい」「あぁ、背後霊さま、ありがとうございます……でも、これだと私、完全にただのミルクタンクだよね」「気にするな。ワシはミルクタンクの背後霊でもあるのじゃ」「背後霊さまも、お疲れさんです」それだけ言うと、美智子は再び小さな鼾をかき始めた。これはこれで、一つの愛の形。(つづく)