tomorou007

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/16

電子ブックを開く

このページは tomorou007 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

いのではないか……と、トモローは思った。むしろ文学的な、いい名前を考えてくれるかもしれない。けれどトモローがそれを頼みに行くと、お義父さんは、あからさまに動揺した。「ぼ、僕に名前を付けろだって? おいおい、そういうことなら、もっと早く言ってくれよ」「いやぁ、スミマセン」トモローが頭を?くと、お義父さんはなぜか中腰になって視線を宙に泳がせ、開いた両手を小さくバタつかせた。どことなく『むすんでひらいて』のお遊ゆ う戯ぎを、崩してやっているようにも見えるが、きっと違うだろう。「あら、じゃあ、智恵子ちゃんでいいじゃない」何も考えてなさそうに、お義母さんが口を挟む。美智子の娘だから、そのバリエーションっぽく『智恵子』という発想なのだろう。「松原智恵子みたいな、美人さんになるわよ」「おいおい、そんな簡単に決めていいもんじゃないだろう」珍しくお義父さんは、お義母さんに対して目を?いた。「わかったよ、トモローくん。きっと、いい名前を考えさせてもらうよ」出生届は、生まれた日を含めて二週間以内に提出しなければならない。すでに経過した日を考慮しても、十日ほどのうちに考えてもらえばいいと、お義父さんには言ったが──当の