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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 5/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

本人がギブ・アップを申し出たのは、それから一週間ほどが過ぎた、退院の日であった。「トモローくん……考えてみれば名前というのは、親が最初に子供に贈るプレゼントだ。やはり親が考えて、つけてあげるのがいいんじゃないだろうか」家のベビーベッドの中で眠っている赤ちゃんに笑みを向けながら、お義父さんは言った。いつものように?はつ溂らつとした口調ではなく、心なしか顔も、ずいぶんやつれているように見える。「どうしたんですか、お義父さん。どこか体の具合でも……」「この人、はりきり過ぎなのよ」気遣うトモローに、呆れた口調でお義母さんが言った。「完璧な名前を付けるんだって、夜遅くまで本をひっくり返したり、漢字の画数を電卓で計算したり……ほどほどってことを知らないんだから」「だって、この子は、その名前で一生を送っていくんだぞ。それを思ったら、アダやおろそかにはつけられないだろう」何でも初めは、歴史上の偉人や著名人の名前にあやかろうと思ったらしいが、すべてにおいてバッチリ……という人が、なかなかいなかったらしい。思えば、どんな人でも人生は山あり谷ありだが、歴史上の人物ともなると、その傾向が一般人よりも強くて当然で、そのすべてにあやかってしまうと少々困ることがある。たとえば楊よう貴き妃ひにあやかった名前をつけると、何だかすごい美女になりそうだが、国を傾