tomorou007

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 8/16

電子ブックを開く

このページは tomorou007 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

「チサトちゃんか、うん、いい名前だな」お義父さんは“智里”と紙に書いてみて、何度もつぶやいた。「うん、いいと思うわ。斉藤智里ちゃん」お母さんも乗り気で、何かの呪文のように、その名前を何度もつぶやいた。これで決まりかな……とトモローと美智子が、顔を見合わせた時。「ちょっと待った!」お義父さんが神妙な顔で、なぜか手をあげて言った。「いい名前だと思うが……姓をかぶせた時、何となくリズムが悪くないか? 斉藤智里、サイトウ・チサト……ほら、トの音が被ってて」言いたいことはわかる。だが、その点については、すでに二人で話し合い済みである。「お義父さんのおっしゃりたいことは、わかりますよ。確かに、ちょっとリズム的に『うん?』という感じですよね。でも生活していて、フルネームを名乗る場面って、そんなに多くないですし……そこは気にしなくてもいいんじゃないかと」「いやぁ、リズムは大事だよ。何ていうのかな、斉藤智里だと、タカ・タン・タカ・タンってリズムだろ? ここはひとつ、タン・タカ・タン・タン……」「ちょっと、あなた、うるさいわよ」釘を刺したのは、お義母さんだ。「親が決めるのが一番いいって、今、自分で言ったばかりじゃないの。そんな細かいことで、