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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 2/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

クールという言い方は奇妙かもしれないが、チーコが生まれてしばらくは、確かに誰もが変に冷静だった。痛い思いに耐えて出産し、さらに昼夜を問わず母乳を与えている美智子には、早々に母親の自覚が持てたに違いないが──それ以外の人間には、この環境の変化にどう対処していくか、まだ迷っている部分があったのだ。たとえばお義父さんは、初孫が生まれたからと言ってやに下がっていると思われるのがイヤなのか、意識的に冷静にふるまっているような節があった。「悪いが、私は初孫ごときでオタオタするような人間ではないよ」と、口には出さないものの、心のどこかで思っているのが態度に見え隠れしていた。だから様子を見に来る回数も少なく、たまに来る時も、お義母さんが車で送れとうるさいから、仕方なく……という言い訳を必ず口にした。また、チーコを抱くように言われても、「フニャフニャしてるから、落っことしてしまいそうで怖い」と尻込みして、自ら手を出すこともなかった。お義母さんの方は、さすが育児経験者だけあって、抱き方一つとっても堂に入ったものだったが、まだ目もぼんやりとしか見えず、表情にも乏しい新生児に、物足りなさを感じていたようだった。自転車で毎日やってくるのも、どちらかと言うと産後の娘を気遣い、若い二人が赤ちゃんを持て余していないか、心配している部分の方が多いように思われた。新米パパとして頑張っていたトモローも、やはり初めのうちは、命について勉強している