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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 10/18

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

10とはできる。“人の心に強く残る作品を書きたい”と思い続けてさえいれば、道はいつでも開いているのだ。そう考えると、もしチーコと美智子にとって最良の道ならば、働きに行くことには何の抵抗もない。むしろ今日まで、こんな生活をさせてもらったことを、ありがたく思わなくてはならないだろう。「だから……もしミッちゃんが会社を辞めたくなってるんなら、俺は反対しないよ。俺が働きに行けば済む話だからね。だから、ここはひとつ、ズバッと本当のところを言ってごらんよ」「そう言われてもねぇ……」奇妙な唸り声を喉元からこぼしつつ、美智子は左右の掌で頭を左右から挟むようにした。人は悩む時、本当に頭を抱えるものなんだな……と、まったく余計なことが頭に浮かぶ。「やっぱり、そこはグレーゾーンっていうヤツなのよ」「グレーゾーン?」「もちろん、チーコと離れたくないのは本当。このまま、この子のお母さんだけやるっていうのにも、すっごく魅力を感じてるわ」それはチーコと一緒にいる時の美智子を見れば、自然とわかる。「でもね……じゃあデザイナーをあきらめろって言われると、それも辛いの。やっぱり、ものすごく執着がある」