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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 14/18

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

14「そのためには、少しくらいのことではヘコまないようにして、みんなで助け合っていこう」無意識のうちに自分が“みんな”という言葉を使ったのに気付いて、トモローは少し驚いた。“みんな”というのは、この場合は自分と美智子とチーコ──そう、この家に生まれたからには、この子にも家族として、がんばってもらいます。「よし、私も心を決めた。この子と一緒にいる時間が減るのは辛いけど、三月から会社に戻るわ。どこかで踏ん切りをつけないと、会社に行けなくなっちゃう」美智子はベビーベッドで眠っているチーコを見ながら言った。「だからトモくんもそれまでに、一人で完璧に、この子の面倒が見られるようになってよね。たまにお母さんも来てくれるだろうけど、当てにしちゃダメよ。むしろ、何も手出しすることがないくらいじゃないと、いつまでもチクチク言われるから」「おっしゃあ、まかせとき」そう言いながら顔の高さに右手を差し出すと、美智子は勢いよく自分の手を重ね、トモローの手を強く握りしめた。「くれぐれも頼むわよ」「了解っす」夫婦というより男同士の友情確認の姿のようだが、細かいことはいいのだ。「今だって結構できてるんだから、そんなに難しいことでもないよ」