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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 15/18

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

15トモローがそう言った時、眠っていたチーコの眉間がピクリと動いたかと思うと、いきなり泣き出した。まるで反対意見を言っているかのような、絶妙なタイミング。「どうしたの、チーコ」抱き上げようと手を伸ばした美智子を、トモローは素早く制した。「悪いけど、ミッちゃんは手を出さないでくれ。ここは俺が、どうにかしてみるよ」実力の程を示そうと、トモローはチーコを抱き上げた。ベビー服の足の付け根部分に指を差し入れ、オシメが濡れていないかどうかを確かめたが、特に問題なしだ。少し前に美智子のおっぱいを飲んだばかりだが、足りなかったのかもしれない。トモローはチーコをベビーベッドに寝かせると、台所に駆け込んで素早くミルクを作った。その間、美智子には手を出したくなるのをガマンしてもらう「よし、温度もバッチリ」流水で哺乳瓶全体を冷やし、適温になったのを確かめて、トモローは部屋に戻った。そして馴れた手つきでチーコを抱き上げると、哺乳瓶の乳首をかわいい口にあてがう。「はーい、チーコちゃん、ミルクでちゅよー」赤ちゃんを相手にする時、こちらも幼児語になってしまうのはなぜか。けれどチーコは一息二息飲んだだけで、すぐに口から乳首を押し出し、いっそう強く泣き出した。「ミルクじゃないのか。じゃあ、あの技しかないな」