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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 16/18

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

16トモローには、密かに“必殺技”を自負している奥の手があった。チーコがなかなか寝付かない時など、これをやると割と簡単に寝てくれる。それは──『森の木かげでドンジャラホイ攻撃』。童謡の『森の小人』を歌いながら抱いてあやすだけの話だが、どこかマイナーな曲調がチーコの好みなのか、かなりの高確率で有効だった。コツとしては、腕だけであやすのではなく、ちゃんと立ち上がって体全体を使って、あやさなくてはならない。腰と膝の曲げ伸ばしが、意外に重要である。「森の木かげでドンジャラホイ、しゃんしゃん手拍子足拍子、たーいこ叩いて笛吹いてぇ?」しかし、なぜか今日に限って、なかなかチーコは落ち着いてくれなかった。「トモくん、悪いけど時間切れ。もう見てらんない」小人たちのお祭りが七晩ほど繰り広げられたところで、見かねた美智子が、おっぱいを取り出しながら言う。着ているものの都合でお腹も一緒に出るが、そこにうっすらと残った妊娠線が、何だか神々しい模様のようでもある。「あっ、あっ、ちょっと待って」「いい加減、かわいそうでしょ。今日はドンジャラホイの負けよ」そう言いながら美智子はチーコをトモローの腕から奪い、乳首を含ませた。悔しいが、泣いていたのがピタッと止まる。「なぜ……なんだ」