tomorou009

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 17/18

電子ブックを開く

このページは tomorou009 の電子ブックに掲載されている17ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

17切り札の魔球を打たれてしまった野球マンガのピッチャーのように、トモローはガクリと膝をついた。「この子は吸う力が強くないから、あんまり哺乳瓶が得意じゃないのは知ってるでしょ。私が会社に行くんなら、この子にも、がんばって馴れてもらわないとね」美智子が冷静な分析をしていたが、そのほとんどはトモローの耳に届いていなかった。ただ床を叩きながら、怨えん嗟さの声をあげるのみ。「ちくしょう、どうして男には……おっぱいがないんだぁ」同じようなものはついているが、見かけも機能もまったく違う。あんなもの、何の飾りにもならない。「あぁ、ミッちゃんのおっぱいが、コブ取り爺さんのコブみたいに脱着自在なら、一個借りるのに」「何か、すっごく無茶で失礼なことを言ってるわね。コブ取り爺さんだって、別に脱着自在ってわけじゃないと思うけど……そもそも、一個って数えてるのが気に入らない」四つん這いになった尻を美智子に軽く蹴られたけれど──おっぱいへの嫉妬心に身を焦がしていたトモローは、まったく気が付かなかった。(つづく)