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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/18

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

が見つけられるんじゃないかしら」トモローは、グゥの音も出なかった。確かにお母さんの言うとおりで、自分が働きに行けない理由は何もない。ただ自分が、昔からの夢にしがみついているだけだ──才能があるかどうかもわからないのに。「私はね……チーコちゃんが大きくなった時、他の家と自分の家が違うって悲しむのが嫌なの。子供って、そういう違いに敏感だから」「くっだらなーい!」とてつもなく酸っぱいものでも食べたような顔つきで、美智子はお義母さんの言葉を遮った。「何よ、今までさんざん進歩的っぽいことを言ってたくせに……お母さんの言葉とは思えないわね」お義母さんは確かに女性の社会進出について、かなり積極的な意見を持っていたとトモローも記憶している。そんなお義母さんでも、実際の孫を目にすると、変ってしまうものなのだろうか──いや、たぶん大事なものの順番が変わったのだ。「美智子だって小さい頃、みんなが持っているオモチャを欲しがったり、流行遅れの服を着るのを嫌がったりしたじゃない? やっぱり人間には、他の人と違うのは嫌だって思うところがあるのよ。それはきっと、チーコだって同じなんじゃないかしら」「それは……」