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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 6/18

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

に極悪だった……という可能性だって十分にあるだろう。そんな父親に母親が愛想を尽かすまで、いろいろあったかもしれないのに、残念ながら何も伝わっていなかった。仮に耳に入ってきても、自分の周囲にいるのは親父寄りの人間ばかりだから、公平な情報とは言えない。だからトモローは、兄貴と一緒になって母親のことを恨む気には、どうしてもなれなかった。もしかすると、欠席裁判で母親だけを悪者にしたくない……という気持ちもあるのかもしれない。けれど、そういう事情と、幼い頃の寂しさはまた別問題である。思い返せば、自分も考えたものだ──どうして自分の家には、友だちの家のように両親がそろっていないのか、と。お義母さんの言うとおり、ある時期の子供は、みんなと同じであることが大好きだ。みんなと同じようなものを持っていることに安心感を覚えるし、違うものしか持っていない時は、それをなるべく人に知られたくない……なんて思ったりする。また、誰かが違うものしか持っていないのを見つけると、遠慮なく冷やかしのタネにしたりする。(チーコもいつか、そんなふうに思うんだろうか)美智子に抱かれているチーコは、まったく何も考えていないように、スヤスヤと眠っていた。この子の心の中にも、いつか人と同じになりたいと思う気持ちが芽生え、自分と違う環境にいる人を、特別な目で見たりするようになるんだろうか。