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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 7/18

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

(そんなの……嫌だ)兄貴なんかに言わせれば、きっと自分の考えは甘っちょろいのだろうが──この子には、そんなふうに思うような人になってほしくない。自分と同じ立場の人でも違う立場の人でも、できるだけ平等な目で見られる人、そして仲良くなれる人になってほしい。そう思った時、いつかの兄貴の言葉に振り回された時のことを思い出した。大げさな結婚式は挙げない……と言った時、兄貴は「盛大な結婚式をやりたがらない女なんか、いるはずがない」と言い切った。つまりトモローが不甲斐ないので、美智子が遠慮しているのだ……と言うことなのだが、思えば、それは兄貴が自分の経験だの考えだのから導き出した推論に過ぎない。一般的な常識を味方につけているから真実味があるけれど、結局は兄貴の考えなのだ。お義母さんの意見も、これと同じだと言えなくもない。やはり一般常識を笠に着ているので、ものすごく正論のように思えるが──結局は、お義母さんの考えでしかない。それを、いかにもチーコ自身がそう思うに違いない……と決めているだけだ。「今度、二人でゆっくり考えてみます」その場で結論を出すことはできそうになかったので、トモローはとりあえず、そう言って話を終わらせた。「別に改めて話し合うこともないでしょ。私たちが決めたとおりにやればいいのよ」