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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 8/18

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

お義母さんが帰ってから、美智子は寝付いたチーコをベビーベッドに寝かせて言った。「いや、今のミッちゃんは、お義母さんに対して腹を立ててるでしょ? あのまま話を続けていたら、絶対ケンカになってたと思う」そういう空気を読んで、あらかじめ面倒を回避するのも、娘婿の仕事……だろうか。「ここはチーコのために、落ち着いて考えなくっちゃダメだよ。大げさでも何でもなく、我が家の根幹に関わる話なんだから」繰り返しになるが、やはり実際のチーコを前にすると、お義母さんでなくても考えが搖さぶられるものだ。それだけ赤ちゃんの力というものは絶大なのだが、だからこそ軌道修正の必要を確認しなくてはならない。トモローがそう言うと、美智子が少し悲しそうな顔をした。「どうしたの、急にそんなこと言い出して……もしかして、小説家になるのをやめようっていうの?」「いや、やめる気はないよ。でも自分の夢のために、チーコやミッちゃんにまで迷惑をかける気なんかないんだ」「ちっとも迷惑なんかじゃないよ」美智子なら、きっとそう言ってくれるだろうと思っていた。けれど、子供まで巻き込む以上、単純にその言葉に甘えていいのかどうか、よく考えなければならない。「ミッちゃんもさ、ときどき呟いているじゃない……この子と離れたくないって」