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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 10/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

10でしなくてはならないことなど、別にない……と考えるようにしたのだ。(チーコを抱いていたら掃除ができないけど、何も一年寝ているわけでもなし、後でやればいいさ)(炊事ができなくて食事の時間が遅くなるけど、別に飢え死もしないでしょ)そんなふうにおおらかに考えることで、ストレスを逃がすようにした。もっとも、これは美智子が家にいて、どちらかが自由に動けるからこそできる対処法かもしれない。たとえば一人だったら、本当にトイレにも行けなくなるだろう。けれどトモローも、“頭は生きているうちに使うべき”という考えの持ち主なので、どうすれば泣かせることなくベッドに寝かせることができるのか、いろいろ考えてみた。何も赤ちゃんは、抱いている人の心音や息遣いを聞いて、抱かれていると判断しているわけではないだろう。おそらくは体勢や温度が心地よくて、安眠しているのではないかと思う。ベッドに寝かされるとそれが変化し、その点に違和感を覚えて、不快になるのではないだろうか。そこで考えたのが、厚めの掛布団ごと抱っこする方法だった。もしかするとトモローくらいの体の大きさが必要かもしれないが、掛布団でチーコの体をすっぽり包むようにして抱き、安定するまで少し待つ。そして深く寝入ったところで、そのまま掛布団ごとベビーベッドに寝かせるのだ。その時、別の布団で緩い傾斜を作ったりしておくと、成功する確率は高くなる。つまりチーコの体勢をできるだけ崩さずに横たえること