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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 12/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

12考えるだけでも恐ろしい。ホルダーで体に固定し、さらに両手で包み込むようにしておかなくては、とても落ち着かない。ベビー用品店には肩から掛けたハンモックのような網状の中に赤ちゃんを入れ、わき腹あたりで抱くものも売られていたが、それを選ぶ勇気が、どうしてもトモローには出なかった。見映えもいいし(そこはかとなく、オシャレである)、ホルダーとしての機能は十分に果たしていると思えるが、赤ちゃんを防御する力が高くない気がしたのだ。やはり強度があり、赤ちゃんと自分をしっかり固定してくれるものが望ましい。それもわき腹などではなく、がっしりと体正面で抱けるものに限る。そうでなければ、もし突発的なことが起こった場合、両腕で赤ちゃんを守ることができないような気がする。そういう基準で買った赤ちゃんホルダーは、全体が明るいブルーの、シックなデザインのものだった。ワンタッチバックルでつけ外しは楽だし、各部の縫製もしっかりしている。赤ちゃんが足を入れる穴も大きすぎず小さすぎず、これから成長しても十分に対応できそうだった。あらゆる点で満点合格のベビー用品なのであるが、ただ一つの難点は、ちょうど抱いた赤ちゃんの背中に当たる部分──つまり世間の目にもっとも触れるところに動物の顔が刺繍がしてあるのだが、それが少しばかり怖かった……ということであろう。何せ初めて店頭で見た時、美智子が怖そうに眉をひそめていたくらいだ。「トモくん……これって、何の動物?」