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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 13/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

13「たぶん、キリンじゃないかと思うけど」トモローも答えたものの自信はなかった。キリンならば長い首まで描いてくれればすぐにわかるのに、なぜか顔の部分だけなので、すぐには判断できない画風なのだ。「いちおう、キリンの角らしいものも描いてあるけど……何だか牛だって言われれば、そんな気もするね」どことなくアメリカのアニメに出てくる動物っぽくて、『トムとジェリー』のトムの面影もある。けれど、頭頂部近くから伸びている二本の角の半端な長さと言い、大きめで端の尖った耳と言い、牛やヤギのように見えなくもない。「もしかすると、改心した悪魔とか」「さすがに、それはないでしょ」タグを見るとフランス製であったが、かの国の人たちのキリンは、そういうイメージなのだろうか。その微妙な絵柄の刺繍以外にはすばらしい製品だったので買うことにしたが──以来、それは二人の間で『フランス悪魔の抱っこヒモ』という大雑把な名前で呼ばれるようになった。「よし、できた」バッグに紙おむつのスペアや、白さ湯ゆを入れた哺乳瓶などを入れ、トモローは家を出た。実は単身でチーコを抱いて出かけるのは、これが初めてであった。今までは必ず美智子と一緒だったし、いずれ仕事に戻ることを思うと、なるべく美智子にチーコを抱かせてあげた