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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 14/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

14くて、自分は荷物持ちに徹することの方が多かった。けれど今日はチーコを抱き、バッグを片手に引っかけて、一人で歩いている──ちょっとばかり、誇らしい気持ちがないでもない。トモローは意図的にゆっくり歩いて、家から一キロほどのところにある大きな公園を目指した。そこには隅の方に梅の木が何本か植えられていて、まだなんとか花が残っているのを買い物に行く途中に見て知っていた。あのつましく美しい花を、チーコに見せてやりたい……と思ったのだ。公園に着くと、チーコより少し大きいくらいの子供たちを連れた若いママたちが、何人も来ていた。一瞬、トモローは面食らうが、考えてみれば当然のことだ。何も自分だけが子供を育てているわけではない。(でも……ちょっと居づらいかな)平日の昼間なので、当然のように父親は自分しかいない。どうしても目立ってしまうのは避けられない。つい、人目を避けるようにして梅の木に近づき、その花をチーコに見せていると──。「うわぁ、かわいい赤ちゃんねぇ」近くを通りかかったママさんが、親しげに話しかけてきた。自分より少し年上のようだが、最初から砕けた口調だ。「何か月?」