tomorou010

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/16

電子ブックを開く

このページは tomorou010 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

チーコが生まれてから、大の仲良しだったはずの美智子とお義母さんの関係が少しばかり悪くなったが、それは今も続いていた。結局は育児に対する考え方の違いが口論の元になることが多いのだが、実の母娘だけあって、一度ケンカしたら、けっこう長く尾を引いたりする。肉親だからこそ、面倒な部分も多いのだ。(やれやれ、どうして、こんなにすぐケンカするのかな)傍で見ていて、そう感じることが多かったものの──二人の仲を改善するために、トモローが何か手を打つわけでもなかった。やはり母娘の問題だし、うかつに自分が口を挟むとかえって拗こじれるような気がするからだ。せめてトモローが心がけているのは、どちらの言い分にも否定も肯定もせず、「ふーん、そうなんだ」という態度を崩さないこと──これは、いわゆる一つの婿の処世術だ。「とにかくミッちゃんは、心配せずに会社に行ってきてよ。ガンガン働いて、家計を支えてもらわないとね」「まかせてよ」そう言った時、無理に着込んだジャケットから、イヤな音が聞こえた。「ウソッ、どっか破れた……信じらんなーい!」この世の終わりのような声をあげながら、美智子は慌ててジャケットを脱ぐ。実は産後、美智子が少しばかりふくよかになったことを、トモローは十分に承知していた。チーコが出てくるまでは、検診の際に「優秀だわぁ」と褒められる程度の増加しかしなかっ