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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 5/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

たのだが、産後に、目で見てわかるほど太ったのである。「大丈夫だよ、ミッちゃん」けれどトモローは、まったく動じず、落ち着いた声で言った。「今まで、ずっと家にいたわけだから、少しくらい育ったっておかしくないって。また通勤するようになったら、自然に運動量が増えて、何もしなくても戻るよ。うん、大丈夫」特に根拠があったわけでもないが、トモローは自信たっぷりに言った。昔から、落ち込んでいる人がいると、とりあえず“大丈夫”と言ってしまうのがトモローの性分である。ついでに“太った”という女性への禁句をさりげなく避け、“育つ”という言葉を選ぶのも。トモローの無責任な言葉に説得されたように、美智子の眉が開いた。「でも、早く戻したいんだったら、ちょっとダイエットした方がいいかもね」そう一言付け足して責任を回避しておくのが、まぁ、旦那の処世術だ。翌日、いろいろな感情が入り交じった複雑な表情で、美智子は出勤した。身支度を整えるまで、「チーコと離れたくないなぁ」と繰り返していたが、久しぶりの化粧を終えると、きっぱりと口にしなくなった。この時点で、仕事モードにシフトしたのだろう。まさに化粧は女の武装である。「じゃ、頼むわよ」そう言って家を出て行く美智子をチーコと共に見送った後、トモローは思わず拳を握りし