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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 7/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

という生き物は、基本的にワガママでマイペースである。何だか肩すかしを食ったような気分でベビーベッドに寝かせると──途端に手をバタつかせ、泣き始める。(おいでなすったかい)トモローは素早く横抱きにすると、右手でぽんぽんとお尻を叩きながら、軽くあやした。これは、いわゆる“抱き癖”というヤツらしい。そういう言葉があることをトモローは知らなかったが、チーコが三か月の頃、お義母さんが連れてきた友だちのおばさんが言っていたのを、初めて耳にした。その人はお義母さんの古い知人で、美智子も子供の頃から知っている人だそうだが、声が大きくて、妙に威勢のいい人だった。お義母さんと一緒にチーコを見に来て、さんざん抱きまくった後、ベビーベッドに寝かせた。その途端に泣き出したチーコを一瞥して、眉をひそめて言ったのだ。「あらら、しょうがないわねぇ……もう抱き癖がついちゃってる」その口調が何だか責めているように聞こえたので、思わず聞き返してしまう。「何ですか、抱き癖って」「そんなことも知らないの? まったく最近の若い人は」トモローの素直な質問に、そのおばさんは心底呆れたように答えた。「赤ちゃんは抱いてばかりいると、抱かれなきゃ寝なくなるのよ。抱き癖がついたら、大変