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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 8/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

よぉ」「やっぱり、良くないことなんですか?」「いいことのわけないでしょ。抱いてもらってばかりいたら、甘ったれの子になるに決まってるんだから。それに、ほら、アメリカだと、もう赤ちゃんの時から別の部屋で寝かせて、夜中に泣いても放っておくって言うじゃない。そうすることで、しっかりした子に育てるんですってね」ある世代の中には、とにかくアメリカを信奉していて、彼らのやり方こそが先進的で正しいのだ……と思い込んでいる人がいるものだが、そのおばさんも、その一人のようだ。(泣いているチーコを放っておくなんて、できるわけないよ)すばやく我が身に当てはめて考えたトモローは、誰もいない暗い部屋で、声を限りに泣いているチーコの姿を想像して、思わず首を振った。いやいや、そういうことは絶対にあり得ない。「子供を育てるってのはね、甘い顔をしてるだけじゃダメなのよ。時には、厳しくもしなきゃ」早々に抱き癖を付けてしまった若夫婦をなじるような言葉を残して、そのおばさんは帰っていったが──その途端に、美智子は呟いたものだ。「何よ、あの言い方……こうなったら抱き癖だろうと寝癖だろうと、バンバンつけてやろうじゃないの」