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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 9/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

いや、せめて寝癖は直した方がいいと思うのだが。「いい、トモくん? あのおばさんが言ってたのは、赤ちゃんを産んだばっかりのお嫁さんでも、労働力としてあてにされていた時代と地域の話だからね。いちいち赤ちゃんを構っていたら仕事ができなくなるから、あんな考え方が一般的だったのよ」そう語る美智子の鼻息は、心なしか荒かった。「でも幸い、うちは違うわ……だから私たちは、この子を抱きまくって育てようよ」「もとから、そのつもりだけど」トモローは、あっさり答えた。こんなかわいいもの、抱くなと言う方が無理な相談である。「それに、あの歳くらいの人って、ホントに外国に弱いわね……何かにつけて『うちはうち、よそはよそ!』っていうくせに」そんなふうに美智子は口を尖らせていたが──実際、抱き癖というものが本当にあって、チーコを抱きっぱなしにしていたら、確かに何もできなくなるということを実感するまで、たいした時間はかからなかった。何せ、抱いている限りは安眠するのに、ベッドに寝かせたとたんに大泣きするのである。正直なところ、多少のストレスを感じないでもなかったが、特に五か月になったあたりから、その傾向が強くなった気がする。その時、まずトモローたちは、自分たちの考え方の方を変えることで対処した。確かにチーコを抱いていたら、何もできなくなるが──だからこそ、チーコを泣かせてま