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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 11/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

11世間もまた、赤ちゃんを連れた若いパパに優しかった。チーコを抱いて地下鉄のホームに立っていたりすると、通り過ぎて行く女性が、気さくに声をかけてくれることが多かった。ある時などは、帰宅途中の女子高生のグルーブに取り囲まれ、やたらとチヤホヤされたこともある。「わぁ、かわいい赤ちゃん! パパと一緒でいいわねぇ」もちろんトモローの胸に張り付いているチーコが、超絶にかわいい赤ちゃんで、その笑顔は鬼でさえ微笑ませてしまうほどのキラースマイルであることはもちろんだが(親バカとは、こういうことを言う)、男性が一人で赤ちゃんを連れているのが珍しいのだろう。実際、あくまでも母親が近くにいて、男性は補佐、あるいは力仕事担当として控えている……というパターンが多かった。「何かにつけて世間は冷たいとか言うけどさ、あれは正しくないね。むしろ世間は、子連れの男に優しいよ」トモローが昼の育児を担当するようになって二か月ほどした頃、夕食の後にそんな話をすると、美智子が鼻白んだ顔で答えた。「それって、もしかしたらトモくんが、奥さんに逃げられちゃったかわいそうな旦那さんに見えるってことじゃないの?」「いやいや、そんなことはないって」「でも前に、そういうおじさんがいたんでしょ?」