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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 14/14

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

14ら。赤ちゃんのうちから母親と離れるなんて、信じられないとか呟いてたから」もちろん、そんな話を聞いたところで、トモローも美智子も揺らぐようなことはない。チーコも含め、家族みんなで力を合わせて、今を乗り越えていこう……と決めたからだ。けれど、思いがけず古めかしい意見が若い人から出てくると、多少の驚きを感じないでもない。男性も積極的に育児に参加し、女性の負担を減らして、なおかつ可能性を広げることは、女性にとってもいいことのはずなのだが──。「お母さんなんか見てると思うんだけど……女の中には、あんまり男に育児とかして欲しくないって考える人もいるみたいよ」「そうなのかなぁ」すぐにはピンと来なかったが、何となく思い当たる節もある。というのも、実は時おり近所の公園で顔を会わせていたお母さんたちの目が、以前とは少し違って来ているような気がしていたからだ。前に会った時は、一人で赤ちゃんの世話をする男性は偉いと言っていてくれたのに──近頃は、どこか怪訝そうに自分を見ている気がする。「そんなことって、あるかなぁ」独り言のように呟いたトモローに、美智子がどこか冷めた声で言った。「残念だけど……世の中のみんながみんな、進歩的な考えを持っているわけでもないのよ」(つづく)