tomorou011

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 3/14

電子ブックを開く

このページは tomorou011 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

作り方なども書いてあって、育児ビギナーにとっては、ちょうどいい手引書のようなものだ。(いいのかなぁ、こんなに楽しい思いばっかりさせてもらって)正直なところ、チーコと遊んだり寝かしつけたりながら、トモローはそう思うことがたびたびだった。こんなにかわいいものを、独り占めにしていいのだろうか……と、美智子に申し訳なく感じることもあったほどだ。さすがにチーコが熱を出したり、長くぐずっている時などは別だが、基本的に大きなストレスとは無縁である。小説を書くスピードはガクンと落ちたが、それは仕方のないことだろう。もちろん、そんな呑気なことが言えるのも、チーコがミルクをよく飲み、よく寝てくれる、いわゆる“手間のかからない子”だから……ということは、よくわかっている。世の中には、難しい性質の子供を一人で世話している人や、そのストレスが高じてノイローゼになってしまう人も、数多くいると聞いている。さらに言えば、チーコ同様に最初の子供の場合、何もかもが初めてなので、いろいろなことの匙さじ加減がわからない。人によっては、そこでつまずいてしまうこともあるだろう。たとえば、やはり育児雑誌の相談コーナーで見た話だが──体重の増加が平均より若干遅い子がいて、育児初体験の若いお母さんは、それをとても気にかけていた。平均だの標準だのという言葉に反応し過ぎているのだと思うが、気にするあまり、それが寝ても覚めても頭から離れないような状態になってしまったらしい。