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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 4/14

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

その若いお母さんは自分なりに理由を考えて、それはミルクの飲みが悪いからだ……と考えた。きっとチーコのように吸う力が強くない子なのだろう、作ったミルクの三分の二くらい飲んだところで、いつも赤ちゃんは寝てしまうのだそうだ。そういうことはチーコにもよくあるが、大おお雑ざっ把ぱなトモローは、「寝ちゃったもんはしょうがないな」と考えて、縦抱きにしてゲップをさせた後(その拍子に起きることもある)、さっさとベッドに寝かせてしまう。けれど、そのお母さんの場合は──赤ちゃんの?を叩いて、無理やり起こすのだそうだ。それも、ぺちぺち叩くレベルではなく、明らかに痛いくらいに叩いてしまうらしい。「ひぃーっ!」その相談を読んだ時、トモローは思わず悲鳴を上げた。何より赤ちゃんを叩くということが、信じられなかった。そのお母さんは、とにかく体重増加の遅れを取り戻したい一心で、かなり手荒に赤ちゃんを起こしてしまうのだ。当然、赤ちゃんは叩かれた痛みで泣き出し、喉が渇いてミルクを飲むそうだが、それを“結果オーライ”とは、口が裂けても言いたくない。近くに親族や友だちがおらず、気軽に相談できる人がいないのもよくないと思うのだが──さらに辛いのは、お母さん自身がその行為に十分すぎるほどの後ろめたさを感じ、自分を責めていることだ。そう感じているのなら、やめればいいのに……と誰もが思うかもしれないが、やめられないから、そのお母さんは悩んでいる。