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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 5/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

『赤ちゃんを叩くなんて、自分は鬼じゃないかと思います。でも、体重が増えてくれないことを思うと、ついつい手が出てしまうのです……』その相談を読んだ時、トモローは、その若いお母さんがかわいそうで仕方なかった。おそらくは頼れる人もない環境で、一人で頑張っているに違いない。きっとマジメな人なのだろうが、それが完全に災いしてしまっている。本当なら、夫が話や悩みを聞いてあげるべきなのだが、相談の文を読む限り、夫は仕事で帰りが遅く、育児にはノータッチなのだそうだ。きっと“俺は外で稼いでいる、家のことはおまえに任せたぞ”というスタンスなのだろう。トモローは当然、その顔も知らない夫に対して、怒りを燃やした──稼ぐことは確かに大事だが、それも家族がいてこそじゃないのか、コノヤロー。会社は定年になったら辞められるが、家族は永久に家族なんだぞ、コノヤロー。相談の解答者(経験豊富な小児科医だ)もそう思ったらしく、平均だの標準だのという言葉に過敏になり過ぎないこと、夫とよく話す時間を持つこと、できれば近くに相談できる人を見つけることを、繰り返しアドバイスしていた。そして何より、何があっても赤ちゃんを叩いたりしないように……と続け、「赤ちゃんの頭に衝撃を与えるのは、とても危険です」という言葉で、回答を締めくくっていた。できれば、そこをもっと具体的に説明して脅かすくらいの方が、より効果的だったのではないだろうか。(俺には……絶対できないなぁ)