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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 8/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

うなってもいいって言ってるんじゃないんだから──それを十分に踏まえたうえで、ちゃんと“鍛練”もするようにね。ちょっとくらい天気が悪くても、一日に一回は、必ず外の空気を吸わせてちょうだい」以前、お義母さんとケンカのタネにもなったほどだが、美智子はチーコに“鍛練”させることが好きだ。単に外に連れ出すだけの話だが、そうすることで、これから生きていく世界の環境に、できる限り馴れさせるのだ。たとえば、子供を大切に育てるという意味の慣用表現で、「荒い風にも当てない」という言葉があるが、実際にそれをやると、子供は弱くなってしまう……と美智子は信じていた。ある意味、体育会系発想と言っていいかもしれない。けれどトモローも、それには賛成だった。世界のどんな厳しい環境の土地にも必ず子供がいるのを見てもわかるように、子供の順応力は大したものである。子供自身が自分の生き方を選べるようになるまで、どんな環境にも適応できるような下地を作ってやるのは、ある意味、親の義務ではないかとも思う。「わかった……チーコはできるだけ鍛えるようにするよ」そう言ってトモローは拳を握ってガッツポーズを決めたが──それは言い換えれば、できるだけチーコを連れ歩け、という意味でもある。さらに砕いて言えば、トモローが行きたいところにチーコを連れて行っても構わないということだ。たとえば、インフルエンザが流行している時に人ごみに連れて行く……というような暴挙さえしなければ、自分の用事にチー