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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 12/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

12もっとも自然の世界でも、子育て中の動物は神経が過敏になっていると聞く。あらゆる危険から子供を守ろうと、心身ともに張りつめているのだ。だから自分の流儀と違う存在、社会の中で少数と思える存在、自分が好感を持たない存在を、少しでも遠ざけようとするのかもしれない。(そうやって、差別とか階級とかが発生するのかもしれないなぁ)砂場でチーコと山を作りながら、トモローは思った。ちなみに、チーコは砂山を作るのが好きで、子供用のシャベルを持たせると、黙々と山を作る。ある程度の高さになって、その山を踏んで壊すのは、もっと好きだ。(おぉ、破壊と創造のダイナミズム)そんな感じで十分ほど遊んでいると──公園の入り口近くで、一台の自転車が止まった。あちこち油が切れているのか、ブレーキ音がホラー映画の叫びのようだ。その自転車に乗っていたのは、髪を見事な金色に染めた若い女性だったが、トモローは目を向けないようにした。(俺は誘拐犯じゃないし、小さい子狙いの変質者でもないし……この子は、れっきとした俺の子だから)何か言われたわけではないが、砂山を作る作業をしながら、そう心の隅で念じた──珍しいかもしれないけど、子育て専業の男もいるんだよ。けれどテレパシーは届かなかったのか、金髪の若い女性は、わざわざ自転車を降りて公園