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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 15/16

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概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

15「ほら、あの人みたいに、ちゃんと子供と遊んであげるお父さんがいるでしょ」よく見るとヤンキー青年の陰に、さっきの金髪の女性が隠れていた。「男だって女だって、自分の子供の面倒を見るのは当たり前なんだって」「わかったよ、うるせえな」ヤンキー青年は子供を抱いたまま口を尖らせて、金髪女性に言った。どうやら二人は若い夫婦で、ふだんから夫である赤い髪の青年は、あまり子供の面倒を見ないのだろう。それに不満を感じていた金髪の奥さんは、トモローがチーコを遊ばせているのを見て、我が意を得たりとばかりに夫を連れてきたのだ。(ひーっ、夫婦の対立に巻き込まないでくれ)トモローはそう思ったが、時すでに遅く──赤い髪の青年は男の子らしい子供を抱いたまま、すぐ近くの砂場の縁に、どかっと腰を下ろした。顔を上げると目が合ったが、どういうわけか三白眼の、いわゆる〝ガン飛ばし〟モードだ。「……ちわっす」「あ、どうも……」トモローの返事は裏返っていた。(つづく)