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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 2/16

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

初めて言葉らしきものをしゃべった、パパと呼ばれた、立った、伝い歩きをした、歩いた──子育てには苦労も多いかもしれないが、うれしいことも多い。手際のよくない親なのに、ちゃんと育ってくれて、ありがたいとさえ思ったりする。そんなこんなで時間は過ぎていき、チーコは無事に、二度目の誕生日を迎えた。そして、トモローの育児生活も、赤ちゃん相手のものから幼児相手のステージへと切り替わっていったのだが──寝ている時間の方が多かった赤ちゃん時代は、むしろ楽だった……と思うほど、このステージは厄介ごとの連続だ。何せチーコはチョロチョロするようになるわ、何でも口に入れたがる時期があるわ、どこでも走るようになるわで、本当に目が離せなくなるのだ。それに加えて、社会に関わる度合いが大きくなって、いろいろな問題にぶつかるようにもなってくる。もちろん親であるトモローも、今までとは違った角度で世界を見る体験を積んでいくことになるのだが──おそらくは育児の延長で、殺気立った暴走族の中に、悲壮な決意で単身乗り込む体験をする人間は、あまり多くないのではないかと思う。そのそもそもの始まりは、砂場のプリン作り競争だった……と言えば、たぶん冗談にしか聞こえないに違いない。チーコが二歳を過ぎた頃の斉藤家の朝は、目覚まし時計が鳴る前に、トモローがパチリと目を開くことから始まる。