tomorou014

NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 3/16

電子ブックを開く

このページは tomorou014 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

起きるとすぐに枕元の目覚ましを手に取り、セットした七時にアラームが鳴らないように解除する。疲れている美智子をギリギリまで寝かせてあげようという思いやりだが、その音でチーコが起きるのを防ぐ意味もある。何せチーコが起きていると、落ち着いて朝食の支度ができないのだ。(人間、変われば変わるもんだよなぁ)静かに六畳間を抜け出て台所に行く時、よくトモローは考える。昔の自分の寝起きの悪さと言えば我ながら呆れるほどで、学生時代は前の夜の十二時前に布団に入っても、九時に始まる一限の授業に間に合わないことがたびたびだった。会社勤めをしていた頃は、寝過ごして始業時間に間に合わず、「取材先に直行しまーす」と見え透いた電話をかけたことも、一度や二度ではなかった。その自分が、今は七時前に自然に目を覚ましている。寒い朝も布団の中でグズグズするようなこともなく、さっと起き上がって朝食の支度に取りかかるのだ。本当に自分でも、こんな〝まっとうな人〟になれるとは思わなかった。(よっしゃ、ご飯はOK)前の日にセットしておいた炊飯器の蓋を開け、ちゃんと炊けているかを確かめるのが、朝一番の恒例行事。この炊き立てご飯の匂いで、頭の線が?がる感じだ。それから朝食づくりにかかるのだが、チーコが大人と同じようなものを食べられるようになったのは、本当に楽になったと思う。もちろん、子供向けに味付けしたり、サイズを小さ